top of page

マサとマサルと部長の日々

 

そしてその噂の三週間程あとの事。

正式に会社からの公示があった。

公示には部長を一つにし、優秀な人材のみを残し、

残りには各自辞令が行くとのこと。

 

この張り紙を見た瞬間私は賢部長の所に走っていました。

賢部長は既に辞令とやらを見ていました。

何と声を掛けていいのか分からず目の前で立っていると。

 

「お、マサタカ。

俺クビになってしまったよ。

仕方がないんだけど、これからどうしようかな」

俺はその言葉に何を言っていいのか分からず。

ただ・・・黙って賢部長がどこかへ行くその背中を眺めていた。

 

それから三週間がたった。

俺は何が出来るか考え、何をしたらいいのか考え、そして。

何も答えは出なかった。

引き継ぎなどもある為、クビの社員は有給休暇を給料上乗せという形で受け取り、

その代わりに一ヶ月間での引き継ぎで有給を使わないという契約になったらしい。

あと一週間、あと一週間。

気ばかりが焦り結果、賢部長に何もできずここまできた。

 

家が近いからどこかで会えるかもしれない。

最後に飲み会とか皆で企画すれば。

携帯のアドレスお互い知っているから。

 

あれこれと理由をつけて話しかける事すらしていない。

いや、出来ていないのだ。

安易な事を言っては「お前に俺の何がわかる」と言われそうで。

深刻になっても「お前は会社に残れるからいいだろ」と言われれば何も言えなくて。

そんな事をウジウジといつまでも考えていた。

 

あと一週間・・・

みんなに話して飲み会的なお別れパーティーでもするか・・・

大人数でしか向き合えない自分が情けないが、

何もしないよりはきっといい。

そんな自己満足な事を考えていると。

 

「マサタカ今日暇か?久しぶりに飲まないか?

っても最後になるかもしれないけどな」

話し掛けられた!

ってか向こうから誘ってくれた!

嬉しさと驚きで一瞬返事が遅くなったが。

「はい是非!

俺も部長誘おうと思ってたんすよ~」

精一杯の去勢を張って明るくした。

 

今日は金曜で今日のお誘いかと思ったら、

今日は残業してやらなければいけない仕事があるらしく、

明日は仕事が休みだが、明日のお誘いだったらしい。

明日だろうがいつだろうが賢部長のお誘いはいつだってOKです!

って話だがな。

 

その日の夜は大変だった。

明日何の服を着ていこうか。

靴はこれでいいかな?

雨は降らないよな?

昼過ぎからの予定だから・・・

ずっと飲み?

ノープランなら俺が考えなくては。

 

そんな夢現な事を考えていたら一時半頃になっていた。

 

 

 

@私の妄想書物presentedでっぷ子狸@

bottom of page